先の通信に記載した「カンボジア体育の仮明け」でご紹介したように、当会はカンボジア小学校の体育科教育支援を実施しています。現在は、教育省行政官から選抜、育成されたNT(ナショナルトレーナー)による「指導会の実施」、「モデル校のモニタリング調査」と「フォローアップ指導」を行っており、最終的にモデル校の教員がブロック州の教員を招いた公開授業を行うことになっています。
 これまでカンボジアの小学校体育では、運動や訓練に重きを置き、スウェーデン体操に似たカンボジア体操と集団行動のみが行われていました。日本では、1913年からスウェーデン体操が学校体操教授要目として発布され、1941年の国民学校発足までの約30年間に渡って行われていましたが、その後、富国強兵の体錬を経て、戦後のアメリカの占領政第の元で、現在の体育科教育に至っています。すなわち、これまでのカンボジアは、戦前までの日本と同様の状態であると言えます。
 体育授業を行うには、教育省、地方教育局、学校、教員が一体となって、①授業時間を確保して計画的に指導する為の「時間的制約J、②運動する場所や体育施設を用意して安全に指導する為の「空間的制約」、③様々な運動を多くのヒトと関わりながら行う為の逍具や教具といった「物質的制約」、④国、地方、学校などで1胄報を共有し、開発していくための「ネットワーク的制約」、⑤それらに携わる全ての人の成長を促す為の仕組みを含めた「人的制約」をクリアにして行かなくてはなりません。
 この様に、ただでさえ難しい条件が棺っているにも拘らず、これまで現代体育を見たことも聞いたこともない人達が指導を受けて習得する難しさは、支援する側にとっても、支援される側にとっても、想像以上の苦難を強いられます。
 しかし、こうしたり加みを持ちながら、最近では、全ての当事者による熱心な活動が実り、少しずつ成果を出し始めています。NTはこれまで以卜の奮闘を見せ、地方教育局員の効果的な後方支援を受けながら学校長が積極的に調整し、体育投業を実施する体制が整いつつあります。モデル校の教員等は自尊心を高め、自ら体育教材を研究し始めています。その結果、子ども逹は、楽しみながら授業に参加して1)健全な態度を育成し、2)連動や健康の知識を高め、3)身体能力を向上させ、4)協力し合う寓びを覚え始めています。
 会員の皆様。どうか、これからもカンボジア体育の行く末を見守って下さい。