文部科学省戦略的二国間スポーツ国際貢献事業(スポーツ・フォー・トゥモロー)プログラム

活動理由

カンボジアでは1970年代の内戦で、施設、人材教材等、教育システムが根底から破壊された。1991年のパリ和平協定以降、教育インフラの再建が進められていたが、人間性の発達の根幹を担う情操教育は殆ど着手されていなかった。また、当該国では研究機関が未開発であるにも関わらず、未だ教育施設整備に偏った教育開発に留まっていた。さらに、国家の未来を担う子ども達の健康・健全育成を保証する上で最も重要な体育科教育は、週2回行われる簡易運動のみに留まっていた。そこで、当会は教育・青年・スポーツ省、JICA、筑波大学との連携を図り、小学校体育科教育授業の全国的な普及に向けて、2006年から2009年にかけて、指導要領の新訂、指導書案の作成を実施、2009年から2012年にかけて、5州10小学校、5教員養成校を拠点校として、基本的な普及基盤を確立してきた。現在は、「カンボジアの小学校体育科教育において、教育・青年・スポーツ省学校体育スポーツ局が自立的に普及できる体制が確立される」ことを事業目標とし、15州(バッタンバン州、シェムリアップ州、シアヌークビル州、クラチェ州、スヴァイリエン州、バンテアイミンチェイ州、コンポンチュナン州、プレアビヒア州、コンポントム州、カンポット州、コッコン州、ラタナキリ州、ストゥントレン州、プレイヴェン州、タケオ州)への普及と自立的普及に向けたシステムの構築に取り組んでいる。

一方、中学校体育に関しては、今で手付かずの状況であり、また、小学校と担当局が異なり、学校体育スポーツ局に加え、国立体育・スポーツ研究所も関わるため、制度的な整理と役割の明確化、人材育成等が引き続き必要である。カンボジアでは2023年の東南アジアゲームに政策の重点を置いている中、小学校・中学校の一貫した体育科教育を確率していくことは、国家政策的に見ても必要性は高い。

本年度の活動概要

photo08

コンポンチャム州中学校の体育授業の様子

本年度は2015年1月より事業を開始し、3月までに以下の活動を実施した。

  • 1. カンボジア国内中学校の体育授業視察による実態調査
    • パイリン州5校の体育授業のモニタリング及び校長、教員、生徒等へのンタビューとアンケートを通した調査
    • コンポンチャム州5校体育授業のモニタリング及び校長、教員、生徒等へのインタビューとアンケートを通した調査
  • 2. 教育・青年・スポーツ省9名を対象とした本邦研修の実施
    photo09

    麹町中学校日本体育システムの説明を聞く本邦研修参加者

    • 文部科学省教科調査官による日本の体育システムの講義
    • 筑波大学岡出義則教授によるカンボジアの中学校体育科教育システム構築の進め方についての講義
    • 岡山大学原祐一助教授によるカンボジア体育の方向性についての講義
    • 岡山県教育委員会小川泰永先生による日本の体育システム(県教育委員会の役割)についての講義
    • 東京都(麹町中学校)、神奈川県(霧ヶ丘中学校)、岡山県(岡山大学付属中学校、岡北中学校、操山中学校)の計5中学校、1小学校(岡山大学付属小学校)の視察
  • photo10

    ワークショップでカンボジアの中学校体育について考える参加者

    3. 岡山大学原祐一助教授を講師としたカンボジアにおける中学校体育科教育の方針を検討するワークショップの開催

    • 指導要領・指導書の位置づけをそれぞれ再確認
    • 学校体育スポーツ局、国立体育スポーツ研究所、州教育局、中学校校長及び体育教員それぞれの役割の明確化各役職においての3年間計画の策定等
    • カンボジアに期待する体育・スポーツについての理想像の検討等

次年度の実施計画

  • 正式に事業を実施するための教育・青年・スポーツ省とのM/Mの締結
  • 運営委員会及び技術委員会の設置
  • 技術委員会を対象とした指導要領作成のためのワークショップ
  • 本邦研修を通した技術委員会メンバーの能力向上
  • 周辺国体育制度調査
  • 指導要領のドラフト作成等

支援団体

カンボジア王国 教育・青年・スポーツ省、地方教育局、モデル小学校、モデル教員養成校

支援・協力団体

文部科学省、日本スポーツ振興センター、筑波大学、岡山大学、岡山県、岡山市、本邦研修受入れ小・中学校