経緯
カンボジアでは、1970年代に続いた内戦で、施設、人材、教材等、教育システムが根底から破壊された。パリ和平協定以降、教育インフラの再建が進められているが、人間開発の根幹となる情操教育は殆ど着手できておらず、研究組織を持たぬ当該国では施設の設置に偏った教育開発を余儀なくされている。また、国家の未来を担う子ども達に対し、適切な健康・健全教育を保証する上で最も重要な体育科は、未だ確実な授業が行われるまでに至っていない。そこで、時代変化に対応可能な体育科授業の全国的な普及に向けて、その基盤整備として、まず、「担当行政官の育成」、「統一的な授業を行うための指導要領、指導書の作成・普及」の早急な対応が望まれている。以上のように、教育の根幹である初等教育で、体育指導に関わる人材の意識と知識を向上させる等、人材育成を図ると共に、国内状況を把握する為の調査手法を導入することで、指導要領と指導書の作成及び改訂の持続可能性を高めることを目的としている。また、上記のプロセスを経て指導要領を改訂すると共に指導書案を作成。モデル校への指導者講習会を行った後、実際にモデル校での指導書案を使用した授業を行って頂き、その調査結果を認定局へ提出する中で指導書を用いた授業の実施に関する提言を行う。 |
2006 |
活動概要(本年は本事業の1年目)
内容
- 体力測定(PFT)調査と体育環境調査(SES)を中心とした統計調査。
- 9カ国の体育教科書関連資料の収集と非公式の翻訳。
- 収集資料の分析とカンボジアに適した指導要領の作成。
- ワーキンググループ・メンバーの基本的知識の向上を目的とした研修および講習会。
ハート・オブ・ゴールドは、当事業で様々なワークショップを開催したが、カンボジアでは、動機付け、能力、人材の全てが不足しており困難を極めた。教育省担当官は、そうした活動を経て、初めて尽くしのプロセスを完了し、製作物を完成させることが出来た。そういった点から講習会は大きな成果を挙げたと言える。
小学校保健体育科指導要領(ADOBE PDF:2.39MB)
次期実施計画
- PFT、SESを拠点校に定着させるため年間行事管理者(統計担当)訓練の実施。
- 教師用指導書に必要な『保健・体育科教育理論(解説編)』、『年間指導計画、単元計画、指導案(計画編)』、『教材案と指導のポイント(挿絵編)』を作成する為の各草案及び最終草案の作成。
- 指導書協議会の開催とモデル校の選定。
- モデル校に対する『簡易スポーツ施設の提供』と拠点校体育教員に対する『指導書を使った授業の実務講習会』の開催。
- 拠点校での教師用指導書を活用した保健・体育科授業の実施および指導。
- 指導書を使用した授業を導入した拠点校の巡回、実態調査および提言書の提出。
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2007 |
活動概要(本年は本事業の2年目)
内容
- 体力測定(PFT)の実施及び測定結果の回収。PFTを拠点校に定着させるため年間行事管理者(統計担当)訓練の実施。
- 教師用指導書に必要な『保健・体育科教育理論』、『年間指導計画、単元計画、指導案』、『教材案と指導のポイント』を作成する為の各草案及び最終草案の作成。
- 指導書協議会の開催とモデル校の選定。
- モデル校に対する『簡易スポーツ施設の提供』と拠点校体育教員に対する『指導書を使った授業の実務講習会』(指導書合同指導会)の開催。
- 拠点校での教師用指導書を活用した保健・体育科授業の実施。
本年度は、指導要領を元にした教師用指導書の作成支援をすることが主要な活動であった。現場のペースと理解度を重視したスケジュール管理を行ったことが功を奏し、全て教育省担当者の手によって作成されたことは、彼らにとって大きな自信となったと思われる。
次期実施計画
- 指導書を使用した授業を導入した拠点校の巡回、実態調査。
- 必要に応じた指導書案の改訂。
- 指導書使用授業の効果を記した提言書を作成、教科書認定局に提出する。
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2008 |
活動概要(本年は本事業の3年目)
内容
- 体力測定(PFT)の実施及び測定結果の回収。
- 試験的に州の地方教育局に対する統計化および回収のトレーニングを開始。
- 教師用指導書最終案の品質向上を目指して、挿絵、専門用語の統一などの再校正を行った。
- 最終的な指導書の内容を確認するために、スヴァイリエン州とバッタンバン州で指導書を用いた授業を試験的に導入した。
- 岡山県大学スポーツ国際交流推進機構と協働し、HGボランティアの助力を借りて、来期事業に向けたプレ事業としてチェイ小学校と近隣小学校教員を交えた指導会を開催。
- チェイ小学校にて、今後のモデルを検討したと新しい『簡易スポーツ施設の提供』(岡山県小中学校)を行った。
本年度は、小学校体育科教育/教師用指導書の作成支援と次フェーズに向けた調査・研究を行い、作成された指導書の使用に関する提言書を教育大臣に提出することを主な活動とした。結果、2008年7月にJPP (JICA草の根パートナー事業)のフェーズ1を完了し、2009年度より開始予定のJPP フェーズ2事業の申請が受諾された。
次期実施計画
- 指導書の最終校正および必要部数の印刷
- ナショナルトレーナー(NT)の組織化および人材育成
- NTによるモデル州での小学校指導者に対するワークショップの開催
- NTによる小学校教員養成校指導者に対する短期講習会の開催
- 参加教員による同僚に対する伝達講習会ならびにモデル校による研究授業の実施
- NTによるモニタリング調査およびフォローアップ指導
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