本稿は、JICAとハート・オブ・ゴールド(HG)のパートナー型事業としてカンボジアで進めている体育科教育振興支援事業の部である体格測定、体カテストの活動状況、その成果を報告します。
活動の目標は、体格測定、体カテストがカンボジアに定着し、当地のカでこれが継続できる体制を作ることです。これは、専門家がカンボジア教育関係者に必要な知識や技術を伝え、各人が習得することが重要課題となります。事業は、現在第フェーズが終了し、第3フェーズが始まろうとしています。
第1フェーズは、はじめにカンボジアで体格測定や体カテストが継続できる体制の基盤を作ることを目指し、各地(1市7州:モデル地域)から選抜された小学校(モデル校)教員に対して体格測定、体力テストについての講義・実技の講習会を専門家が行った。講習会は、年に数回実施してモデル校への巡回も行った。カンボジア教員は、体格測定経験が少なく、体カテストを自ら受けた体験や測定活動を行った経験がなく、体カテストをはじめ、身長や体重の測定についての講習会も行った。また、講習会中は、カンボジア教育省スタッフの一部(NT:ナショナルトレーナー)が常に専門家に同行し、その進め方、必要な知識を学んだ。NTに対しては、教育省内で彼らに対する講習会も開き、第2フェーズ以降は彼らが講師として少しずつ指導出来ることを目指した。
本フェーズは、NTが,.体格測定や体カテストに関する講習会を行って、小学校教員がこれを理解し、勤務校で測定活動を進めて行ける技術の習得が重要だった。活動を通じての課題は、測定結果を「何処で・誰が」集計するかであった。
第2フェーズは、NTが講習会講師の中心となり、第1フェーズからのモデル校を主な拠点として全士を5ブロックに分け進めた。地方講習会は、常に専門家が動向してNTが十分に理解していない内容の講義を担当し、彼らの「出来る事」と「出来ないこと、不十分なこと」を明確にして不足部分をNTに改めて指導した。NTは講習会を重ねる毎に知識、経験、自信を深め、専門家の担当講義部分が減っていった。また、先フェーズからの課題であった、測定結果の集計は、地方巡回、ミーティングを通して各モデル校所在地のPEO(州教育省スタッフ)がコンピュータ入力してデジタル化することとした。PEOに対するデータ入力の講習会は、小学校教員への講習会と平行して専門家が行った。本事業の測定活動の伝達経路は、RECTI制度*の一部でありNTが必要事項の指導を小学校教員に行い、その後、各学校で測定活動が行われ、その結果は測定校所在地のPEOがデジタル化する体制とした。デジタル化されたデータは、さらに、全国データとしてNTがまとめることとなるが、これに関する講習会も必要だった。第3フェーズは、第2フェーズ同様のモデル地域で、活動の自立的普及に向けて人材育成、体制構築の充実を図ることとなる。現在、カンボジアHG西山所長を中心にJICA、筑波大学、専門家、カンボジア教育省等の活動日程の最終調整が進んでいる。
事業の成果は、体格測定、体カテストの普及に向けて教育省・地方教育省・学校三者の仕事内容が明確となりその技術の習得が進んでいる。また、測定結果は、まだ十分とは言えず、安定したデータを得ることが出来ないが、地域によって体格や体力に差があること、短期間で体格が大きく増加していること、日本の学童と比べて体格や体力が劣ること等が認められ当地の貴重な基礎データとなっている。
カンボジア教育支援活動の部を報告したが、現時点ではまだ十分な支援とは言えず、さらに事業を進めて行くことが重要となる。将来、これらの支援活動が終了し、それ以降、カンボジア教育関係者によって自国の体育科教育が進められることを強く望むものです。
*RECTI制度:体育科教育技術を、中央 → 地方 → 州 → 群へと普及していく人材育成方法