私が取り組んだ活動で主になったのは、シェムリアップ州の小学校3校、教員養成校1校における体育科教育の普及活動でした。以前のプロジェクトで、各学校には研修を受けた数名の教員がおり、教員向けの指導書もあります。この教員と指導書を中心にすべての教員が体育を行えるよう支援していくのが私の役目でありました。
カンボジアの先生方は、よくこう言います。「体育は高い専門性や運動能力が必要なので、私にはできない」
しかし、これは大きな誤解です。普段の遊びの延長でも体育はできますし、先生がしっかりルールさえ理解し、子ども達に守らせることができれば、子ども達は自然とその運動に意味を見出します。
このことを念頭に、各学校で毎月一度、ワークショップを開き、月ごとに取り組む内容を先生方が実際に体験し学び、後日学校巡回をしながら、それぞれが抱く疑問に答えていました。各学校で体育を行う条件も全く異なります。道具の有無(コーンやボール等)、グランドの環境条件(タイルや土)、時間割の構成も違うため、学校ごとに先生達が抱く疑問も様々でした。
カンボジアでは一年を通して気温が高いため、一般的に早朝と夕方しか体育を行いません。学校によってはクラス数が多く、場所、道具の制約があり、時間割を変更せざるをえないこともあります。それでも先生方は、自ら試行錯誤し、徐々に自信をもって授業を行えるようになりました。体育を楽しみに学校へ通う子も見受けるようになりました。これは今のカンボジアでは小さくも、とても意味のある一歩です。今後もこれらの学校が中心となり、さらに広い範囲で体育が普及していくことを願っています。