2017年1月からJICA草の根技術協力事業として実施している「中学校体育科教育指導書作成支援・普及プロジェクト」で、2017年11月13日から16日までの4日間、岡山において、カンボジア教育・青年・スポーツ省(以下、教育省)の技術委員会メンバーを6名招聘して本邦研修を実施しました。
12日夜、岡山に到着した一行は、13日午前、岡山県立操山中学校・高校の体育の授業を視察、午後は岡山県教育庁で保健体育課の平井宏之先生より講義を受けました。14日は午前中に岡山市立藤田中学校、午後は岡山市立第三藤田小学校を体育の授業を中心に視察しました。15日は総社市立総社西中学校の体育の授業を視察し、夕方にはソレイユ・ペタンククラブの方々とペタンクの練習試合をしました。16日は、午前中に岡山大学大学院教育学研究科原祐一講師より講義を受け、午後には岡山市立東山中学校の体育の授業を視察し、16日の夕方には帰国の途につきました。
この研修に参加した教育省の担当官は、これまで一度も日本に行ったことがなく、ビデオ等で日本の体育の様子は見たことがありますが、実際に日本の体育授業を見たり先生方に質問をするのは今回が初めてでした。この研修で、日本の先生たちがどのように指導書を利用し、授業を展開しているのかを実際に見てもらい、指導書にどのような内容を記載すればカンボジアの先生にとって分かりやすい内容になるのかを彼らに考えてもらうことが目的でした。
彼らが先生達にした質問から、日本の先生が体育授業で生徒の運動時間を十分に確保する工夫をしていることや、技能だけでなく関心・意欲・態度、思考・判断をどのように評価しているか、生徒自身が考えることにより授業を進めていく教授法、限られた時間内で子供たちの学びを最大限にするために授業の準備が大切なこと等を学んだことがわかります。彼らは、カンボジアに戻った後、本邦研修の内容を他の教育省担当官や現場の中学校等に伝えていくことを決意していました。
現在、プロジェクトでは、2016年12月に教育省により認定された学習指導要領に沿った内容の指導書を作成しており、11月末の時点で、中学校1年生のドラフトが完成しました。今後は、各領域・種目で統一感がないこと、今までボカタオ(伝統スポーツ)や卓球、ペタンクといった種目は体育の先生が実施したことも学んだこともない状況で新しく教えていくためには難しいこと等、より現場の体育の先生たちにとって読みやすい、利用しやすい、教えやすい内容へと修正していく必要があります。今回の本邦研修では、その修正をしていくためのきっかけとなる知識を身につけることができました。
ハート・オブ・ゴールドはこれからもカンボジアの教育省、州教育局、校長や体育の先生と共に成長しながら、中学校の体育の先生や校長先生、州の教育局の担当者が理解しやすい指導書を作成し、カンボジア全国の中学校の生徒が新しい体育を通じて「態度・知識・技能・協調性」を学んでいけるよう、プロジェクトに取り組んでいきたいと思います。