HGデンタル班は、TAO東洋医学研究会(1986年発足)という歯科分野で東洋医学を学ぶ者が集う研究グループを母体とし、HGスタディツアーでボランティアを申し出た有志で構成されています。2014年に3名で始めた活動も、徐々に人数が増え、2017年は14名(椋梨、倉橋、岡、石井、上垣、佐藤、神谷、阿部、山林、貴志、河合、穂積、長尾、久保)になりました。
2017年は、ツアー2日目午後にNCCCで歯科治療を行いました。ツアー参加者が子ども達からアプサラダンスの歓迎を受けている間に診察準備です。多目的図書室に、即席のデンタルチェアーを2台準備しました。歓迎式典後、手の空いた子ども達から診察場へ。最初に一眼レフカメラで噛み合わせや口腔内状況の記録をとり、口腔内診査へ。そしてむし歯治療や抜歯処置、歯石除去、染色による歯の汚れの診査と歯みがき指導を行いました。これまでの歯みがき指導と治療の効果はてき面で、年長者になるほどむし歯が少なく、処置が必要な歯も少なくなっています。食後の歯みがきはきちんと習慣付いているようです。午後5時頃に無事歯科治療が終了しました。
ツアー3日目は、チェイ小学校で、チェイ幼稚園児99名とチェイ小学校児童558名の合計657名の歯科検診と歯みがき指導を行いました。毎年、まず、歯科検診の意義を校長はじめ教職員の先生方に説明することから始まります。日本ではおなじみの集団検診ですが、カンボジアではまだ保健の概念がなく、学校で検診を行う意義がなかなか理解してもらえません。「検診結果がわかってどうするのか?」と聞く先生もいました。健康の保持と増進のため、健康教育のため、疾病のスクリーニングのため、学校という集団で行うことの意義を説明し、理解してもらいました。カンボジアは校舎と教員数の不足で、午前クラスと午後クラスに分かれて授業をしているため先生の顔ぶれが異なるので、同じ内容の説明を2回しなければなりません。検診は青空の下、木陰で2人一組5グループに分かれ同時進行で行いました。3枚綴りの歯科検診票を作り、学校、児童、日本への持ち帰りとしています。
2名の歯科衛生士が、ドクターと2人一組になって各教室を回り、エプロン型の媒体を使って歯みがき指導をしました。
2016年に好評だった「歯みがきサンバ」の動画を、持ち込んだPCとプロジェクターで映し出し、音楽に合わせて鏡を見ながらブラッシングをしてもらいました。午前中は、スタディツアー参加者11名がボランティアとして、各教室で子ども達へ歯ブラシや手鏡、磨き残しチェックのための歯垢染色剤の配付、紙コップへのうがい用水道水の配給と洗口後汚水の回収などをして下さり、大変助かりました。
今回の検診結果を過去と比較して以下に示します。
世界的なむし歯の評価基準にDMFT(1人平均むし歯数)があります。D(未処置う蝕歯)とM(喪失歯)とF(う蝕が原因で処置された歯)の総和を人数で割った数、つまり1人当たりのむし歯経験値です。2015年:幼稚園から小6まで対象者680人のDMFT=7.4
2016年:幼稚園から小6まで対象者654人のDMFT=7.1
2017年:幼稚園から小6まで対象者657人のDMFT=7.7
日本の場合はほとんどがFの治療完了歯ですが、チェイ小ではほとんどがDの未処置歯です。チェイ小では一人平均7本以上のむし歯があります。また乳歯のむし歯治療はほとんど行われていません。
12才時DMFT(永久歯列が完成する12才が世界的比較対象)は、2015年;6年生4.0、2016年;6年生4.3、2017年6年生4.0になっています。なお、日本国内では1.0を切っています。
チェイ幼稚園・小学校の児童のむし歯の本数による割合を表にしました。幼稚園から小6までの657名中:むし歯のない者は7.7%、むし歯罹患率は92.3%(表参照)です。
最後に、歯科検診票と手鏡を提供して下さった藤沢ロータリークラブ、歯ブラシ、歯磨剤、タオル、消毒薬などの支援物資を提供して下さった(株)明治、タカラベルモント(株)、ライオン(株)、SUNSTAR、(株)トミヤ、伊藤歯科器(株)、GSKグラクソ・スミスクライン(株)、クロスフィールド(株)(敬称略)に感謝申し上げます。