2017年1月から始まった事業も佳境に入ってきました。カンボジア教育・青年・スポーツ省(以下、教育省)の技術委員会メンバー(以下、TC)から提出された中学1~3年生のドラフトの内容を改善するために、ワークショップを重ね、多くの課題を解決しながら、指導書がいよいよ完成に近づいています。
事業計画ではドラフト提出の締め切りは2018年8月末でしたが、TC達は総選挙で忙しく、提出されたのは9月中旬、急いでHGスタッフが翻訳し、確認作業を始められたのは10月に入ってからでした。7領域・20種目もあるので、確認にはかなり時間がかかります。しかも、各領域・種目を担当するTCによって書き方や表現の仕方が異なっている部分を統一する必要があり、ワークショップを開いて、用語、分量、イラストの入れ方等、共通理解を図りながら、全体の一貫性を高めていきました。
10月にバッタンバン州とスヴァイリエン州で、11月にプノンペン市で、ドラフトを中学校の教員に読んでもらい、読みやすいかどうか、年間計画・単元計画・指導案を実際に作成できるかどうかを確かめるワークショップを実施しました。その中で特にうれしかった出来事が2つありました。
1つはバッタンバン州で、州教育局の課長が3日間の全ワークショップに参加し、教員と一緒に年間計画等を作成していたことです。小学校事業では、州や郡の教育局担当官は、ワークショップの準備だけして参加はしないのが通常でした。今回、その意識が変わったのは、バッタンバン州では、今年から自ら予算を確保しワークショップを実施するようになったため、自分達も体育を理解していなければいけないと考えたからではないかと思います。
もう一つはプノンペン市でのワークショップです。教員達はワークショップの始めに渡された3冊の分厚い指導書ドラフトに圧倒されて途方に暮れていました。そこで、指導書のどこを読み、どのように書けばよいのかを丁寧に説明していったところ、3日目に表情が一変し、積極的に指導案を書き始めたのです。自分達が「知っている」「分かる」ことで、他の教員にも教えられるようになり、これから体育を教えるのが楽しみになったと言っていました。終了翌日に年間計画・単元計画・指導案を作成する教員が出て来るなど、指導書の使い方が明確に理解され、しっかりと活用されるための準備ができたと感じました。
指導書は、1月中に完成させ、2月の教育省からの認定をめざしています。指導書がカンボジア全土の教員に配布され、それを教員達が理解し教えることによって、全国の子ども達が新しい体育の授業を受けられるようになるまでにはまだまだ時間がかかりますが、関係者一丸となって普及を進めて参ります。