HGは2017年1月から、2016年12月に教育・青年・スポーツ省(以下、教育省)により認定された体育科学習指導要領に基づいた指導書の作成支援事業を行っています。
当初、2018年9月の完成を目指し、11月からの新学年で配布することを目標としていましたが、2019年5月末になってもまだ完成していません。理由として、教育省担当官やHGスタッフの作業の遅れもあったのですが、学年の途中で配布するよりも、時間をかけて、より先生に分かりやすい、利用しやすい指導書を作成しようと方針転換を行ったためです。
現在取り組んでいることは、今まで多くの種目を教えていなかった現場の先生達がより理解できるように分かりやすいイラストを導入することや、完成して本になった際にそれぞれ1頁で見える内容を考え先生達が見やすい構成になるよう校正しています。また表現についても統一した言葉が使われるよう、HGで2006年から勤務しているKeoSochetraが全ての指導書の内容を確認し、丁寧に修正を加えています。
カンボジアの先生達は、体育の先生になる際に現在の学習指導要領にある器械体操や卓球を習っていません。そのため突然読みづらい指導書を渡されても、理解ができないと想像できます。私達のゴールは指導書を作成することではありません。先生達がその指導書を読み、指導書に記載されている「態度、知識、技能、協調性」を子ども達が学べることがゴールだと思っています。そのためには、どのようにしたら先生達が指導書をもとに年間計画や単元計画、指導案を作っていくことができるのかを考えて、指導書を作成する必要があると考えています。
また、指導書の配布だけでは新しい体育の普及は難しく、教育省も指導書の内容を説明するワークショップ(以下、WS)を行いながら、広げていくことが重要であると考えています。今までは、HGがプロジェクトとして確保していた予算のみでモデル州に対してWSを実施していましたが、2016年からは、教育省の独自予算でも実施されるようになっています。自分達の予算で、自分達の考えで普及を担えるようになっていることは、HGが今まで地道に体育の価値を説明してきた大きな成果だと考えています。
中学校は全国に約1,700校あり、この1,700校に新しい体育を効率的に普及するためには、HGと教育省のプロジェクト以外に、教育省が市・州の教育局や各学校と連携して普及していく必要があります。現在、プロジェクトでは、プノンペン市、バッタンバン州、スヴァイリエン州で普及を実施していますが、3州に約28校の対象校があり、いくつかの学校ではすでに新しい体育が導入されています。市・州の教育局の人達が新しい体育を教えられる先生を活用し、それぞれの市・州で独自の普及システムを確立していくことも重要になります。
2020年9月までのプロジェクト実施期間に、①教育省内に指導できる人材の育成、②指導書の作成を通した指導内容の確立、③モデル市・州での新しい体育の普及を並行して進め、カンボジアのすべての中学校で体育普及の基盤を確立していくことを目指します。