スポーツNGOであるハート・オブ・ゴールドがカンボジアで行って来たアンコールワットハーフマラソンを通じて交流が始まったシェムリアップで、 郵政事業省の国際ボランテイア貯金からの協力が得られた。協カパートナーNGO「スナーダイ・クマエ」と共に貧困層のための農業訓練プロジェクトが計画され平成12年6月から開始した。ハート・オブ・ゴールドから 農業専門家として、2000年10月16日~21日に元JICA専門家(野菜栽培)の木村三男氏が現地指導のために派遣された。以下木村氏の農業技術指導報告書からの一部抜粋

「調査および技術指導の内容」

●スナーダイクマエ第一農場

 農場の規模は約2ヘクタールあり周辺は田んほや湿地の広がる地域である。農場は湿地の部分、果樹帯、建物で約半分を占めており残りが野菜圃場 である。土壌は有機質の少ない砂質から粘土質で掘り起こすと40cm~50cmで水が出た。雨期はそれなりに雨が降り水も溜まるとのことであったがしっかりした排水路を掘ってやれば大洪水が無い限リ対応可能であろう。それよりも問題になるのは乾期の貯水量であ る。特に4~5月は水が少なくなりかつ高温でもあるので野菜の受けるダ メージは大きいと予想される。野菜の種類によって水の要求度が異なるのでそれの少ないものと多いものをうまく組み合わせて栽培する必要がある。野菜栽培技術に関しては畑の土つくり、苗作リの技術として苗床の作り方、播種の仕方、 苗管理の方法、害虫防除のため方法、栽培 に関しては綸作の重要性を説明し圃場全体の栽培体系を作るよう指導した。特に、農場の簡易地図の作成と区画整理(ナンバリング)今後の管理記録の作成を指導し、具体的な栽培方法としては西の定植の方法、藁マルチの有効性、トマトの雨除け栽培の可能性等々について指導した。

●スナーダイクマエ第2農場

 開墾部分は12,000坪程度(一部にバナナが植えられている)、未開墾の部分は相当あるが面積ははっきりしない。農場入口から開墾部が広がリその先の未開墾の部分との境を川が流れておりポンプを使用しての灌漑が可能である。乾期でも水が枯れることは無いとの情報であった。圃場は雨期でも適常は堪水することはないようなので管理さえすれば果樹の栽培が可能と思われる。今後は果樹の品目選定や栽培指導のために果樹専門家の派這が必要である。

「市場調査」

 シェムリアップの町はアンコールワットの遺跡観光の拠点であり飛行機が首都のプノンペンやタイのバンコク からも乗リ入れてあリホテルも数多い。よって野菜や果樹の需要は今後も増えていく可能性が高い ので現在は米だけを栽培し野 菜は自家用くらいしか作らな い貧困農家が品質の高いものを生産できれば換金作物として大いに期待できる。町の中 には2つの大きな市場があり野菜、果物だけでなくあらゆるものが並んでいる。

「考察」

 現地の試験農場スタッフは専門家のBunthoeun氏をはじめとして全員が栽培技術の習得に熱心であった。現在は周辺農家が来場した時に野菜栽培の指導等を行っている状態であるが、 今後年間を通して野菜を作る技術が確立して行けば地域の拠点となり得ると いえよう。今後は農場の栽培試験をデモンストレーションとして活用し貧困層の人が興昧を持って自発的に来場す るような環境づくリ(集会所の建設等) に力を入れるべきであろう。第2農場の方は果樹を主体としだデモンストレー ションファームとしての体制作りを支援すべきであろう。