世界では「学校体育の必要性」について、幾度となく繰り返し、議論されてきました。G8を初めとする産業先進諸国では90年代に知的教育偏重型の教育政策を採った結果、「体育」、「情操」、「課外活動」などの教育にかかる時間が制約されるようになり、若年肥満児、生活習慣病、不登校および中退者数などの問題が浮き彫りとなりました。1999年にドイツのベルリンで開催された世界体育サミット(BerlinWorldSummit)ではそれらの課題と運動の関係から学校体育・スポーツの重要性が再確認され、2005年には国連によって「国際体育スポーツ年」が設置されています。その際に行われた世界統計では世界の79%の国と地域で学校体育が行われており、アジア地域では33%の国や地域でしか学校体育が実施されていない現状も明らかにされています。
カンボジアも他の東南アジア地域と同様に日本で行われている現代体育が整備されておらず、心身ともに健康な国民生活を保障することが出来ないという危機的な現状が浮き彫りとなりました。国際体育スポーツ年の翌年、カンボジア王国教育省の学校体育スポーツ局は、国家を支える人材の「社会性」、「戦略的思考」、「体力(行動・防衛)」、「統率力・調和力」、「社会性」をなどを学校教育で保障するために体育科の指導要領を新訂しました。(ここからHGの支援が開始されています。)その後、指導書を作成し、それを基準として、ブロック分けされた地域の中心州にある幾つかの小学校を、今後の普及拠点とする計画を立てた「フェーズⅡ」を開始し、現在は、その3つ目のブロック(リージョン5)に移動して振興活動を行っています。
1番目のブロック(リージョン1)では何もかも初めての試みなのでHGが振興活動を主導し、手探り状態の調整を行いましたが、初めての地域であったことなどからナショナル・トレーナー、NT(特別なトレーニングを受けて選抜された教育省の行政官)も奮闘し、その勢いが校長や教員達に伝染。最終的には、日本の熟練教師顔負けの素晴らしい授業が公開授業で実践されるまでに至りました。
2番目のブロック(リージョン2)では、NTを中心に据えてHGが後方支援する形で取り組みました。但し、「少し、権限と調整の移譲の時期が早過ぎたこと」、「リージョン1とリージョン2の州民性や学校の特徴が違ったこと」、「リージョン1の成功イメージが強すぎて成功率が薄れてしまったこと」などから、NTが感じる充実度や達成度に多少の陰りが見えてしまいました。
3つ目のブロック(リージョン5)では、これまでの課題と経験を生かして、NTの成長を促す支援を行いたいと考えています。